和式トイレの水漏れやつまりのリスクについて
日本では1980年代まで、多くの一般家庭や会社・学校・公共施設などに備え付けられているトイレといえば和式トイレでした。昨今では洋式トイレが主流となりつつありますが、洋式と和式とでは基本的な構造が大きく異なっているのが特徴です。ここでは和式にスポットを当てて、水漏れやつまりなどのリスクについて詳しく解説をしていきましょう。
和式トイレの概要と洋式タイプと異なる点について
和式トイレは1920年に陶器製のものが国内で生産されるようになりました。当初は汲み取り式となっていて便器は外枠のみしかなく、その下に浄化槽というものを備えて定期的な汲み取りを行う必要がありました。
1960年代の高度成長期になると、都心部から地方の自治体で下水道が整備されたことを受けて、和式の水洗化も急速に進み、便器に排水口を備えた水洗式和式便器が誕生するに至ります。この水洗式和式トイレの特徴は水洗タンクを備えている点で、1リットル~2リットル程度の水をタンク内にためてレバーを押すことで一気に水が流れ出ます。これにより汚水を下水道へと押し流すことができ、常に清潔に便器を維持することが可能となりました。
1990年代になると洋式便器が普及しだし、腰をかけた状態で使用できることからバリアフリー対応のトイレとして注目されます。この洋式の場合は水洗タンクが外付けではなく便器本体に備わっているのが特徴で、和式便器のように室内の水洗タンクを備える必要がありません。
しかし、汚水を下水道へと流すためには、便器内に備わっているポンプを駆動させなくてはならないため、必ず電源コードをコンセントに接続して電気の供給をするという点が和式との違いとなっています。総務省の調査によると2020年5月時点で国内にある和式は約550万個なので、今もなお高い需要があります。
和式トイレで発生する水漏れはどのようなもの?
和式のトイレで発生する水漏れは、便器本体からのものと、水洗タンクからの水漏れの、大きく分けて2種類に分けられます。便器本体の水漏れの場合は高床式便器となっているものが大半で、排水口の部分が割れることで水が漏れ出てきます。
この排水口は陶器をらせん状に曲げた形となっているため、陶器の厚さがわずか0.5mm程度しかないのが特徴です。そのため非常に破損しやすく、長期間水に触れていることも相まって劣化しやすい箇所といえます。水漏れが起きた際は水道修理専門会社に依頼をすればすぐに対応してくれ、排水口部分を新たに金属またはポリ塩化製のパイプに付け替えてトラブルが発生し難く改良することが可能です。
水洗タンクからの水漏れの場合は、タンク内部に備わっているフロートという部品が劣化することで発生します。このフロートとはタンク内に蓄えられている水を便器へと流すためのレバーと直結している部品で、タンクの底にある排水口のフタの開閉を担うものです。
フロートはラバー製となっているため常に水に触れていることでひび割れが起こりやすく、割れた箇所から水がタンクの外へと漏れ出てくるというわけです。
水洗タンクからの水漏れを修理するのは水道専門会社に頼む他、自身で部品を購入して修理をすることも可能です。ホームセンターやネット通販で新しいフロートを購入すれば、数十分程度で修理は完了します。
どうして和式トイレは水漏れやつまりが多発しやすいの?
現在主流となっている洋式トイレは、水漏れや排水管つまりといったリスクが限りなく少ないのが特徴です。ところが和式トイレはその反対で、水漏れやつまりが起こりやすく、日本水道下水事業団協会が2010年~2016年の間に調査をしたところ、一般家庭のトイレトラブルのうち約75%が和式であったことが明らかとなりました。
なぜ和式は水漏れやつまりのリスクが高いのか、それはトイレの仕組みと形状が理由として挙げられます。和式の場合、その構造上、水の力を使って汚水を下水道へと流します。このときに必要となる水量は約2リットルで、レバーを1回押すごとに毎回2リットルもの水が水洗タンクから便器へと流れるため、その間に配管やタンクなど、水を伝わらせる器具が多いのが特徴です。
これらの一カ所にでも劣化や不具合が発生すれば水漏れが起こるので、水洗タンクのない洋式よりも必然的に問題は発生しやすいといえます。つまりに関しては和式の場合はらせん状の排水溝となっているため、一度に大量のペーパーを流すとカーブ箇所でつまりやすくなります。これはJIS(日本工業規格)で定められた形状であるため、改良することができません。
一見すると和式はリスクが高いように見えますが、適切な使用方法を守ってメンテナンスも欠かすことがなければそうそう問題は発生しません。トラブルが起きたとしても、水道修理専門会社に依頼をすればすぐに解決してくれるので安心です。
和式トイレは日本生まれの独特の形状をしたもので、今も一般家庭で広く使用されています。電気が一切不要で、水の力のみで便器を清潔に保てることから、衛生面で優れているものでもあります。水漏れやつまりといったリスクを把握しておけば、トラブルを回避して末永く快適に使用できることでしょう。